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社労士コラム

解雇制限と打切補償

2019年8月1日 社会保険労務士 原田聡

労働者が、業務中に業務が原因でケガをした場合、労災保険の療養補償給付として治療を受けることで、原則として本人負担はありません。健康保険のように医療費の3割負担はありません。また、労災保険では、治癒(症状固定)するまで治療を受けることができます。
 業務災害により長期療養を取っている労働者に対して、会社としては解雇を考えたいが可能かどうかの相談を受けることがありますが、労働者が業務上負傷したり、病気になった場合、その療養のための休業期間とその後30日間は解雇することができません。解雇が制限されることになります。

 しかし、労災による療養を開始してから3年が経過しても治っていない場合、会社は労働者に対して、1200日分の平均賃金を支払うことで、解雇制限が解除されるので、解雇することが可能となります。この1200日分の平均賃金を支払うことを「打切補償」といいますが、打切補償には、治療開始後3年経過時点またはその後に、労災保険の傷病補償年金を受けているか受け始めることになった場合も含みます。

 ただ注意しておくことは、「打切補償の支払いで労働者解雇がそのまま許される」ってわけではありません。解雇するにあたり、打切補償を支払いで、正当な解雇理由ができるわけではありません。
 ということは、業務災害であるにも関わらず、会社から、「かかった治療費は全額会社が支払うから、労災保険ではなく、健康保険を使ってくれ」なんて言われても、労災保険を使わなかったとすると、しばらくしてから「解雇」ということもあり得るかもしれません。健康保険を使っての療養中に解雇制限はありません。
そもそも、業務災害にも関わらず労災保険を使わず、健康保険を使うことは犯罪ですけどね。